切削加工で工具寿命を延ばすには?生産を止めない仕組みづくりを解説

切削加工は型彫り放電加工よりも加工が早いため、短い時間で作業が可能です。さらに加工面の仕上げ肌状態は工具形状や加工機械の動作条件によって制御できるため、品質も安定します。

しかしながら、被削材の種類によっては、切削加工時に受ける工具の負荷が高くなり、加工の安定性が下がります。工具寿命にバラつきが生じるため、取り扱いの難しさに悩んでいる方も多いでしょう。
本記事では、工具寿命の概要から、工具寿命のバラつきの要因となる破損を検知できる「止まらない生産システム」について紹介します。

止まらない生産システムの解説動画

工具寿命とは

工具寿命とは、同じ工具を使い続けた際に、製品を狙い通りの寸法に切削できなくなる状態になるまでの時間を指します。簡潔にいうと、工具寿命=切削時間です。
工具寿命が長いほど、長い時間、工具を使用できるため生産効率が向上します。

工具寿命はどうやって判断する?

工具寿命を判断するには、製品側の以下のような変化を判断基準とします。

  • 狙いの寸法から外れてきた
  • 仕上げ肌状態が綺麗ではなくなってきた
  • 加工音が大きくなってきた
  • バリが大きく出るようになった
  • 切粉の形状や色が変わってきた

工具寿命が短くなる原因は?

工具寿命が短くなる、つまり切削できなくなる原因は、工具の損傷です。工具の損傷は「摩耗型」と「破損型」に分けられます
「摩耗型」はテーラーの工具寿命方式「VTn=C」(V:切削速度、T:工具寿命、n・C:定数)を用いることで、工具寿命を算出することができます。
一方、「破損型」は突発的な発生がほとんどで、工具寿命の予測が難しいとされています。

例えば、超硬合金を金型材料として適用された金型製作において、使用した工具(ダイヤコートボールエンドミル)の切刃にはコーティングのはがれや欠けはありますが、摩耗による損傷はありません。

この「欠け」は、突発的に発生するものであり、同じ切削条件かつ同じ切削量を経たとしても、同時のタイミングで破損は発生しません。もちろん異なる切削条件下でも同じ結果になります。
このように、「破損型」は発生までには大きなバラつきがあることが特徴です。

工具寿命を延ばすには?

工具交換のタイミングに大きなマージンをとる手立てを加工プログラムに組込むことで加工中の工具損傷を回避します。
また、過去の加工実績や経験的なノウハウからその交換時期を設定し、定数交換するという方法も、工具損傷の回避方法として多く用いられています。
しかしながら、これらの方法では、工具を元来の寿命最大限まで使用することができないためコストがかかります。また、連続した無人加工もできないため、人件費もかさばります。さらに、先述したとおり「欠け」など突発的に発生する工具破損は、回避することができません。

そこで、当社では工具の状態をリアルタイムで可視化できる「止まらない生産システム」を開発しました。これによって工具が破損する前に工具の自動交換ができるようになり、さらに工具を寿命を最大限まで使い切ることでコストをダウンさせることもできます。
詳細を次から説明します。

工具寿命を延ばす「止まらない生産システム」とは

「止まらない生産システム」とは、その名の通り、生産を止めることなく続けられるシステムです。
本システムは、当社製「PiezoBolt」とムラテック製「MMM」によって構成され、工具損傷・工具寿命を予測してリアルタイムで加工設備を制御し、工具が破損する前に工具交換を行うことができます。

「止まらない生産システム」の構成

構成は以下図の通りです。

加工設備に当社が取扱うボルト型圧電式荷重センサー「PiezoBolt」を組み込みます。
PiezoBoltによって、加工設備の主軸にかかる微妙な荷重変化のデータを収集するのですが、PiezoBoltは非常に感度の高いセンサーのため、欠け、割れ、摩耗等に強く相関する情報だけでなく、設備の動力電源や内部電気回路また周辺設備等、相関性の少ないデータも収集します。
関連性の高いデータだけを抽出するため、比較、評価システム「MMM」を使用します。「MMM」は、いわゆる人工知能と呼ばれるシステムで、データの「比較、評価、判定」が可能です。
PiezoBoltとMMMによって、通常の切削時の「正データ」を構築し、これを実加工運用時で判断指標に指定することで、リアルタイムでの工具破損の判定を実現します。

「止まらない生産システム」の適用事例

「止まらない生産システム」をベベルギヤ金型の直彫り加工へ適用した事例を紹介します。
円筒状の超硬素材から、荒工程→仕上げ工程→磨き工程を経てベベルギヤ金型の製作を実施しました。加工工程の中で使用した工具本数と加工時間は、以下表の通りです。

止まらない生産システムの事例
工具の使用本数が、半分近く減少し、工具交換回数減少によって加工時間も減少しました。なお、加工中は機械アラートによる異常停止はなく、使用後の工具には目立った損傷はありませんでした。
従来では、加工実績による経験から加工段取りや加工プログラムの修正を徐々に加えていくことが求められましたが、本システムを用いることで大胆に変更できるようになります。

最後に

いかがだったでしょうか。
今まで人の感覚に頼っていた工具寿命の判断が機械による判断になることにより、工具を本来の寿命の最大限まで使用できるようになります。

今回は切削加工に焦点をあてて、工具寿命の延ばす方法をご紹介しましたが、PiezoBoltは板金加工や鋳造など生産現場のあらゆる課題に適用が可能です。
お困りになられていることがあれば、お気軽にお問合せください。

モニタリングソリューション活用事例集

圧電式荷重センサー「PiezoBolt」を用いて、生産現場のあらゆる課題を解決した事例をまとめた資料です。

無料ダウンロード

関連記事

人気記事

お問い合わせ

contact

弊社製品、サービスについて、ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
弊社営業拠点に直接ご連絡いただく際は、こちらで連絡先をご確認ください。

お問い合わせ

Top