公開日:2020/07/02

延性破壊とは?脆性破壊との違いや、延性破壊による不良・不具合を検知した事例を紹介

延性破壊とは、素材が塑性変形によって引き延ばされ、限界を超えてしまい破壊することを指します。目視検査が主流の対策とされますが、製品の内部に破損があったり、欠陥が目視で確認が難しいほど小さなものだったり、回避が難しいこともしばしばあります。
本記事では、延性破壊の概要から、延性破壊を検知する方法を事例を交えながら解説します。ぜひ、ご一読ください。

延性破壊とは?

素材が塑性変形することにより伸びの限界を超えてしまうと、亀裂が発生して進展し、破断に至ることがあります。このような欠陥を延性破壊といいます。大規模な塑性変形を伴う冷間鍛造で発生しやすく、微小な亀裂の発生でも鍛造製品の性能に大きく影響するため、延性破壊欠陥の検知による流出防止が重要とされています。
一般的な検知方法としては目視検査が挙げられますが、下図のシェブロンクラックのように内部に延性破壊欠陥が発生し、外観からは確認できない場合もあります。

脆性破壊との違い

延性破壊と対になる現象が脆性破壊です。
脆性破壊は、素材に応力を加えた際にほとんど塑性変形せずに破壊に至ることで、ガラスや陶器、金属だと黒鉛や鋳鉄など脆い性質ものでよくみられる現象です。常温では延性破壊を起こす材料も、低温環境下だと脆性破壊を起こすことがあります。

【事例】深穴加工で発生する延性破壊を検知

ここからは多軸モーションプレスによる複合成形工法を適用した深穴成形品の冷間鍛造における延性破壊欠陥の検知事例をご紹介します。
深穴製品の断面形状は下図の通りです。後方押出と前方押出をミックスすることで通常工法では難しいとされている深穴の成形を実現しています。

この工程では適切な背圧の調整が必要とされますが、ダイピンに与える背圧が過大だと成形荷重が増加するため、金型の寿命に悪い影響を及ぼします。一方、背圧が不足すると、以下図のように成形の途中で鍛造品に割れが生じてしまいます。

ボルト型荷重センサーによる対策

こういった延性破壊による欠陥(割れ)を検知するために、ボルト型圧電式荷重センサー「PiezoBolt」を用いてモニタリングを行いました。

※ボルト型圧電式荷重センサー「PiezoBolt」とは?
ボルトの内部に圧電素子を用いたセンサーユニットが埋め込まれた荷重センサー。
力(圧力)を加えることで電圧を発生させる圧電効果を利用して、微小な荷重変化の計測が可能。
より詳しい内容は、以下リンクよりご覧ください。

モニタリングソリューションのセンサー

下型へリング形の治具をはめ込み、PiezoBoltで締め付けて固定することで、内圧による下型の膨らみを力として計測します。PiezoBoltはボルト型のため、機械や金型への追加工を必要とせず取り付けることができます

モニタリング結果

ダイピンの背圧を、通常条件(30ton)と減圧条件(10ton)の2パターンを適用して検証トライを実施しました。結果は以下のとおりです。

  • 背圧10tonパターンでは、成形時に鍛造品の底に延性破壊による割れが生じた
  • 背圧30tonパターンでは、割れは生じなかった
  • モーション1(後方押出区間)では背圧10tonと30tonの信号差は小さい
  • モーション2(前方押出区間)では、背圧10tonと30tonの信号差は大きい
  • モーション1から2に変わる区間において、背圧10tonで不自然な荷重変動が現れている。延性破壊の発生と関連性が高いと考えられる

工程前半のモーション1(後方押出)では設定した背圧の差に比べて、信号差は小さく変動も少ないです。後半のモーション2(前方押出)に切り替わるとすぐに背圧10tonのパターンには荷重変動が現れ、ピーク荷重が背圧30tonより小さく抑えられています。
このことから、延性破壊による欠陥(割れ)はモーション2開始後すぐに発生していると考えられ、モーション2における背圧制御が割れ対策のポイントとなります。

以下図に延性破壊の検知に向けた危険領域の設定例を示します。赤いボックスで定義された異常エリアに信号が侵入すると延性破壊が発生したと判断して適切な工程制御(プレス停止もしくは不良品・不具合品の除外など)を施すことができます。
今回の事例では、顕著に不良の波形が確認できましたが、データの傾向の分析・認識をさらに進めることで、目では確認できないような製品の内部破損や小さな破損などの異常の検出も期待できます。

最後に

いかがだったでしょうか。
今まで人の感覚に頼っていた目視検査のの判断が機械(センサー)による判断になることにより、即座に不良・不具合を検知することができます。
今回は延性破壊に焦点をあてた事例を紹介しましたが、ボルト型荷重センサーは様々な不良・不具合を検知することが可能です。お困りになられていることがあれば、お気軽にお問合せください。

モニタリングソリューション活用事例集

圧電式荷重センサー「PiezoBolt」を用いて、生産現場のあらゆる課題を解決した事例をまとめた資料です。
・金型の割れ発生を検知
・パンチ摩耗の予兆を検知
・破断の原因を究明 など

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