鋳巣とは?
「鋳巣」とは、鋳造工程において素材の内部に空洞が生じる現象を指し、読み方は「ちゅうす」また「いす」です。鋳巣は、鋳造欠陥の一種であり、製品の強度や耐久性に悪影響を及ぼすため、不良品流出を避けるためにも発生を防ぐことが重要です。
鋳巣の発生原因
鋳巣の発生原因は大きく分けて2つあります。
- 溶湯中に混入したガスや気体が、鋳造時に凝固して空洞となる
- 溶湯の流れが悪く、溶湯が金型内に完全に充填されず、空洞となる
※溶湯は、高温で溶解した液体金属のこと
ダイカストでは、成型する形状に対し高圧、低圧、真空などの製法があり、それぞれガスや気体の混入を防ぎ溶湯の流れを最適化する条件を設定しますが、鋳巣をゼロにすることは難しいです。ダイカスト以外でも、砂型鋳造やロストワックスといった製法がありますが、同様に発生する可能性があります。
鋳巣の種類と対策
鋳巣は大きく分けて、ひけ巣とブローホール(ピンホール)の2種類に分類されます。
引け巣とは?
「ひけ巣」は、金属が液体から固体になるときに体積が減少する凝固収縮によって発生します。
溶湯が凝固する際に、凝固収縮する体積分の金属を補給することでひけ巣の発生を防ぎます。
その際は凝固による補給経路が閉ざされないようにすることが肝要です。
ブローホール(ピンホール)とは?
「ブローホール」は、鋳造内に発生する丸みを帯びた空孔で、鋳造時に鋳型内に生じた空気やガスが残ったまま凝固し発生します。鋳造条件や湯道を変更し、ガスを残りにくくすることや脱酸材を用いることもあります。
ピンホールはブローホールと比べて小さい空孔を指します。
【事例】アルミダイカストの生産で発生する鋳巣の原因を特定
※本事例は、IVI(Industrial Value Chain Initiative)、業務シナリオWG活動より抜粋したものです。
この事例では、アルミダイカストの生産で、鋳巣がたまに発生し、
- 同じ条件で生産しているが鋳造機の違いによって鋳巣が発生する
- 何が原因で鋳巣が発生しているのか真因が掴めていない
というお悩みがありました。
対策
対策として、押出ピンにかかる圧力を検知できるよう、圧電式荷重センサー「PiezoBolt」を設置し、計測を実施しました。
※ボルト型圧電式荷重センサー「PiezoBolt」とは?
ボルトの内部に圧電素子を用いたセンサーユニットが埋め込まれた荷重センサー。
力(圧力)を加えることで電圧を発生させる圧電効果を利用して、微小な荷重変化の計測が可能。
より詳しい内容は、以下リンクよりご覧ください。
効果
その結果、溶湯温度や金型温度の違いによって圧力が立ち上がるタイミングにズレが発生することが判明しました。
またそのタイミングのズレから、溶湯の流れ方が変わり、内部のガスが抜けきれていないという鋳巣の原因を特定することができました。
最後に
いかがだったでしょうか。
鋳巣を防ぐ方法は、多くありますが、今回はセンサーを活用した方法を紹介させていただきました。
鋳造以外の工程にも多く活用されており、鍛造や切削、プレス成形などでも実績があります。自社の生産ラインに適用できないか、不良品が流出して困っているなどお困りのことがあれば、お気軽にお問合せください。
