センシング技術を活用した金型の長寿命化について解説

いまやIndustrie4.0やIoT(Internet of Things)といった新しいものづくりの考え方は一般的となり、ものづくりの現場には欠かせないものとなってきています。その1つとして、センサーを活用したセンシング技術による工程の見える化や異常検知などが注目されています。
当社でも、センシング技術と鍛造シミュレーションを活用することで金型の寿命を向上させる取り組みを行っています。その中でも、今回は、センシング技術を活用した「金型監視システムによる金型長寿命化の事例」をご紹介させていただきます。

鍛造工程の生産現場における金型の監視

鍛造工程の生産現場において、クラックや摩耗など鍛造金型の異常有無を判断するために検査人員を配置して、目視で観察していませんでしょうか?
元来、金型の監視の手法として、人の感覚に頼る目視観察法は主流ではありますが、目視観察には以下のような課題があります。

検査頻度や定量的な判断基準の設定が難しい

どれくらいの頻度で生産を停止して、金型を検査確認するのか。また何をもって、「金型に異常が発生しそう」と判断するのか。どちらも、人による目視観察では、指標を定めるのは困難です。

評価にばらつきが生じる

人は機械ではありませんので、どうしても見る人によって、評価にバラツキが生じてしまいます。経験やスキルの違いから、定量的な評価ができず、不良品の発生が多かったり少なかったり、安定しないことはないでしょうか?

観察するための人がいない

そもそも監視するための人員を確保できない。スキルや経験が不足していて宛がう人材がいないなど、人員確保や教育面などの課題もあるでしょう。

金型の生産を効率的にするために

当然ですが、クラックや摩耗などの異常発生は、鍛造金型の短寿命の原因となります。異常発生を未然に防ぎ、金型の寿命を延ばしたい!金型の生産を効率的に行いたい!少ないコストで生産したい!など、さまざまな課題があるかと思います。
では、実際に成形中に起きる金型の割れやかじりなどの異常を事前に検知できたとしたらどうでしょうか?発生する前の段階、つまり予兆を検知できれば、不良品が大量に発生することを防ぐのはもちろん、金型の生産を効率的に、さらに少ないコストで実現することができます。
今回は、そんなご要望を叶える「金型状態監視システム」の事例をご紹介いたします。

状態監視システムによる金型の長寿命化

金型状態監視システムの設置方法

まず、下図のように金型の外周にリング型の治具を装着します。そして通常のボルトの代わりに圧電式荷重センサー「PiezoBolt」で締付けを行います。
この「PiezoBolt」には、ピエゾ素子が埋め込まれています。ボルト型なので、既設のボルトと取り換えるだけで、外向きの金型の弾性変形による周方向変形を、リング型治具を通じたPiezoBoltの軸力の変動として受け取ることができます。また、PiezoBoltはロードセルでは測ることのできない微細な荷重も検知可能なため、クラック発生および進展時に発生する振動もリング型治具を介して感知することができます。

センシング技術を活用した結果

凹形断面の金型に円柱形状のワークを挿入し、パンチによる0⇔120kNの一定繰返し加圧を100回行い、PiezoBoltの荷重変化、割れの信号検知有無を確認しました。
PiezoBoltの軸力変化と成形荷重をまとめたグラフが以下のものです。

このグラフを見ると、22回目、93回目の成形においてPiezoBoltの軸力変化が大きく異なる信号として得られたことが分かります。これは、成形荷重が最大になる時点でクラック発生による振動を感知し信号が計測可能な最大値を超えてしまい、大幅にシフトした結果と推測できます。
実際に、100サイクル後の金型に浸透探傷試験を行った結果が以下の画像です。き裂の存在が確認でき、これから22回目と93回目の成形においてき裂の発生および進展があったものと考えられます。

このように、PiezoBoltのようなセンシング技術を活用すると、金型の異常の予兆を検知することが可能です。
予兆を確認することができれば、予兆が発生した時点で生産を止めることができるので、不良品の大量発生を防ぐことができます。また、金型の破損原因となるデータも取得することができるので、そのデータを用いて工程条件を最適化し、金型寿命を改善するといったことも可能です。

まとめ

以上の内容を、振り返ってみましょう。

鍛造工程の生産現場における課題

人による目視観察では、

  • 金型寿命を評価するための指標を定めるのが困難
  • 金型の寿命を定量的に評価できない
  • 金型生産を監視するための人員の費用/人手不足

不良品の発生を防ぐための対策

  • 金型監視システムを用いて、金型の異常の予兆を検知

金型監視システムを活用した結果

  • 常時監視が可能になり、金型寿命の定量的な評価を実現
  • 金型の異常の予兆を検知し、金型を長寿命化
  • 金型生産を監視する人員の人件費を削減

いかがでしたでしょうか?今回、実験に使用した「PiezoBolt」は、金型の異常検知や、不良対策、設備保全などさまざまな場面で活用することができます。
今回、ご紹介した内容は一部のものとなります。他の事例も知りたい、という方はぜひ事例集をご覧ください。

モニタリングソリューション活用事例集

圧電式荷重センサー「PiezoBolt」を用いて、生産現場のあらゆる課題を解決した事例をまとめた資料です。

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