公開日:2020/07/17

金型の「割れ」とは?原因や金型寿命を改善した事例を解説

金型の「割れ」とは、金型を構成する材料の一部または全部が分断された状態のことです。割れを防ぐには、なぜ破損したか原因追及が最も重要です。
人、機械、材料、方法、金型ではどの要因が最も影響しているのか。早期破損する頻度、ある周期、ある条件下で生じるのか、突発的に早期破損が出るのか…など調査する必要があります。型設計を変更すると破損を防ぐことはできても、真の原因を潰さないと同じ事を繰り返しますので、ご注意ください。

金型の「割れ」とは?

金型の「割れ」とは、金型を構成する材料の一部または全部が分断された状態のことを指します。
代表的なものとして以下の3点が挙げられます。

  • 縦割れ
  • 横割れ
  • 熱疲労による亀甲割れ(ヒートチェック)

金型の「割れ」の原因と対策

「割れ」が発生する原因は、成形時に金型にかかる応力が材料の強度以上となることです。
亀甲割れについては金型が受ける加熱・冷却の温度サイクルによる圧縮・引張りの繰返し応力により発生します。

対策としては、成形による発生応力の低減、靭性値の高い材質への変更、型構造の見直し(締め代変更)、表面処理方法の変更等により改善が期待できます。
当社では、破損した金型現品の調査(マイクロスコープ・切断調査)によって発生原因を特定、CAE活用による型構造の見直し(STERECONの採用も含む)、レイアウト(工程形状)の変更などを提案しています。
次からは、「割れ」対策の事例を紹介します。

【事例】成形ダイスの横割れ(リング割れ)の改善

今回ご紹介する横割れ(リング割れ)の代表的な現象としては、下記のことが挙げられます。

【形態】
インサート内面に周方向に部分的に割れが発生する
→割れが繋がって、リング状に破断する

【場所】
①絞りR部で割れが発生する
②インサート内面のストレート部で割れが発生する
③金型のほぼ中央で割れる

横割れが発生した原因

そもそも横割れ(リング割れ)が生じる原因とは、何でしょうか?
今回の事例では、次のことが原因と考えられます。

【①の原因】
・応力が引張荷重となり、インサートの強度を越える。
・①部の隅Rが小さく、応力集中する。
・①部は応力干渉部にもなり、締め代効果が出ない。

【②の原因】
鍛造品が接触している箇所と接触していない箇所の境界にせん断応力が発生し割れてしまう。(下図と同じ原理)

【③の原因】
インサートの肉厚対して全長が長く、内径が鼓状に変形し、内径面の引張限界を越える。

その他にも、素材の硬度が高いことが原因で割れてしまったり、素材の傷、打痕、錆などによる金型についた傷が起点となり割れが入ったりすることもあります。

金型寿命を改善する方法

【①の対策】
・成形負荷の軽減、または分散させる
・コーナーRを出来るだけ大きくし、応力集中を低減
・高靭性のインサートを使用

【②の対策】
・インサートを横方向に2分割もしくは3分割にする
→割れてしまう所で、予め割ってしまう。

【③の対策】
・全長と肉厚の比率を適正にする。

まとめ

【インサートの横割れ(リング割れ)の主な原因】

  • 成形負荷が大きい
  • 絞り部のコーナーRが小さい
  • インサートの肉厚に対して全長が長い
  • インサートの材質が適切ではない

【横割れ(リング割れ)を防ぎ、金型寿命を延ばすための4つの方法】

  • 成形負荷は小さくする
  • コーナーRは出来るだけ大きくする
  • 割れる箇所で予め割っておくインサート肉厚と全長の比率の適正化
  • 高靭性のインサートに変更
  • いかがでしたでしょうか?今回は、インサートの横割れ(リング割れ)に絞って、金型寿命の改善方法をご紹介させていただきました。
    当社では、本事例の他にも多くの金型寿命を改善した事例があります。もし、金型寿命でお困りごとがございましたら、お気軽にお声掛けください。

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