L/D10倍の深穴成形を実現。大幅な軽量化とコストダウンを叶える深穴成形技術をご紹介

自動車業界において、部品の軽量化とコストダウンの両立は永遠の命題です。特に中空部品の製造において、高価なパイプ材に代わる「中実材からの深穴成形」は極めて有効な手段ですが、そこには物理的な加工限界という大きな壁が立ちはだかります。
本記事では、一般的な加工限界を大きく上回る「L/D=10倍」の深穴成形をいかにして実現したのか、金型設計・シミュレーション・独自のノウハウという3つの観点から、その開発の舞台裏を解説します。
| 用途 | 自動車部品 |
|---|---|
| 材質 | 合金鋼、炭素鋼 |
| 工法 | 冷間鍛造 |
| 成形荷重 | 15tonf |
| 開発期間 | 3ヶ月 |
開発の背景と課題
自動車部品において、内部を空洞にするパイプ構造や中空シャフトといった中空部品は、軽量化を図る上で非常に重要な役割を果たします。しかし、これらの中空部品を製作するためにあらかじめ穴の空いたパイプ材を購入すると、材料自体に加工費が含まれているため、非常に高価になるという問題がありました。そこで、安価な中実の棒材から鍛造によって深穴成形を行う手法が有効となります。
また、鍛造であれば、穴を貫通させない形状でも一工程で成形できるため、パイプ材では不可欠だった後加工の手間やコストをカットすることが可能です。
このように、コスト低減と軽量化を高い次元で両立させるためには、中実材から高精度に深い穴を成形する高度な鍛造技術が求められます。
一般的な限界を超えるL/D10倍への挑戦
コスト低減と軽量化を両立させる切り札として期待される深穴成形ですが、加工の深さには物理的な限界が存在します。深さと径の比率を示すL/Dにおいて、一般的な量産実績はL/D=4~5倍程度です。L/D=8倍を超えると、形状は作れても金型寿命が極端に短くなったり、製品が偏心したりといった課題が顕著になります。
今回の開発では、この技術的な壁を大きく超えるL/D=10倍という非常に難易度の高い深穴成形に挑戦し、それをクリアすることに成功しました。以下では、その突破口となった具体的な開発ポイントについて解説していきます。

高強度パンチの開発と最適設計
この L/D=10倍という深穴成形を実現するには、成形荷重によるパンチの破損や変形を可能な限り抑え込む必要があります。特に断面減少率(内径面積と外径面積の比率)が厳しくなる条件(穴径に対して肉厚が薄い、あるいは厚い場合)では、パンチにかかる負荷が飛躍的に高まります。
これを回避するために、当社では、様々な対策やテクニックノウハウを織り込まれた独自の型設計に加え、最適な金型材料の選定、そしてミクロン単位の精密な金型製作技術を融合させることで、この過酷な成形環境においてもパンチの早期破損や変形を防ぎ、難易度の高い深穴成形を実現しています。

潤滑切れやパンチの曲がりを抑制する独自のノウハウ
深穴成形では成形距離が非常に長くなるため、途中で潤滑が切れて「かじり」が発生するリスクが常に伴います。これに対し、当社は過去の豊富な実績から最適なコーティングを選定し、適切な工程設計・金型設計を行うことで可能な限りの延命が施されています。
また、パンチの曲がりによって外径に対して内径がズレてしまう「偏心」を防ぐため、金型構造や剛性を工夫することでパンチの曲がりを最小限に抑制しています。さらに、材料側の作り込みも重要であり、前工程での焼鈍や潤滑油の供給方法に至るまで、当社のノウハウに基づいたベストな手法を提案・実施しています。
CAE活用による強度・変形の事前検証と最適化
パンチの強度が生命線となる今回の開発において、成形中の内部挙動を可視化するCAE解析の徹底活用は不可欠なプロセスとなりました。L/D=10倍という領域では、わずかな荷重のアンバランスがパンチの折損や製品の偏心に直結するため、実機でのトライ&エラーのみに頼る開発は極めてリスクが高く、膨大な時間とコストを要するからです。
具体的には、設計段階においてパンチの強度や変形を事前に確認し、少しでも有利となるパンチ形状を決定したり、製品が破損しないか、また要求通りの形状が得られているかを事前にシミュレーションして初回試作から対策を織り込みます。
このように、当社では、バーチャル空間での検証を繰り返すことで、金型の早期破損や製品破損など考えられる様々なリスクを最小限に抑えつつ、発生した時の準備もしておくことにより、要求精度を最短期間で達成するための最適解を導き出し、開発効率を飛躍的に向上させています。

限界に挑む深穴成形。中空シャフト等の課題を「技術」で解決します
今回ご紹介した L/D=10倍の深穴成形技術は、当社の飽くなき挑戦と積み重ねてきた知見の結晶です。他社で「不可能」と断られた難形状や、コスト面で諦めていたシャフトなどの中空部品の製造も、当社の高度な鍛造プロセスと解析技術を組み合わせることで、実現への道が開けるかもしれません。
軽量化の追求や、パイプ材からの工法転換による大幅なコストダウンをご検討の際は、ぜひ一度当社へご相談ください。貴社の製品開発を、確かな技術力で強力にサポートいたします。


