公開日:2023/11/21

冷間鍛造金型とは?熱間鍛造・温間鍛造との違いや材質の選び方を解説

冷間鍛造金型とは、その名の通り「冷間鍛造」という加工方法を用いて製作される金型のことです。
冷間鍛造は、材料(金属)を加熱しないで、室温又は室温に近い温度でおこなう加工方法です。金属の塑性を利用して加工するため「塑性加工」とも呼ばれています。
常温で成形されるため、金型の変形と変寸をある程度正確に予想することができ、それらをフィードバックさせることで、高精度な製品を生産できます。
また、高圧下になるため、金型の仕上げ精度が、そのまま鍛造品に転写され、非常に平滑な製品(面粗度のよい)が得られます。

この記事では冷間鍛造金型の基本の概要から、高精度な鍛造品を生産するための材質の選び方、金型寿命の延ばし方まで解説します。

冷間鍛造金型とは?熱間鍛造金型、温間鍛造金型との違い

鍛造には、冷間、温間、熱間という3種類の加工方法があります。

それぞれの特徴は以下のとおりです。

冷間鍛造とは

材料に熱を加えないで常温で行う鍛造のことを冷間鍛造といい、「塑性加工」とも呼ばれています。
常温で鍛造を行うので、スケールによる肌荒れ、加熱・鍛造条件に伴う寸法差が少なく、寸法精度が高い、表面肌が滑らかな鍛造品の成形が可能です。
また、後加工による処理もほとんど不要なため、材料ロスが極めて少ないことも冷間鍛造の特徴です。
一方で、工具に大きな負荷が加わることや変形に伴い材料が脆くなって、鍛造中に割れが生じたり、残留応力による寸法変化を生じるなどの問題が発生したりすることがあります。

温間鍛造とは

熱間鍛造と冷間鍛造との中間の温度で行う鍛造のことを温間鍛造といいます。
一般的に、200℃〜300℃程度と、600℃〜800℃程度の2種類の鍛造温度がよく使われます。冷間鍛造では成形できない複雑な形状の製品や難加工材でも、変形抵抗が比較的低いため、容易に成形できます。
寸法精度や表面品質は冷間鍛造よりも劣ります。

熱間鍛造とは

材料を加熱し、再結晶温度以上、個相線温度未満の温度範囲で行う鍛造のことを熱間鍛造といいます。
材料の延性が増して変形抵抗が下がるので、複雑形状の成形が可能となり、機械加工代を大幅に削減できます。また鍛錬により、材料の機械的性質の改善も可能です。
その反面、酸化スケールや加工中の温度のバラつきにより、寸法精度は冷間鍛造・温間鍛造より劣ります。

冷間鍛造金型に用いられる型材(材質)

金型に用いる型材料・品質は、型材料の硬さ・粘さとは相反する関係にあります。
クラックの成長を抑えるためには、型表面に塑性変形が起こらない最低の硬さを保持し、その硬さで粘さを最大限に安定して確保できる材質・熱処理条件を決める方針を採ることが重要です。
型材を選定するにあたって、利用する側の視点をまとめましたので、参考ください。

ハイス(高速度工具鋼)

靭性的に最も好ましい状態での硬さに対する材種系列を作ることができます。
高靭性タイプのマトリックスハイスについても同様の系列化が考えられます。

粉末ハイス

粉末ハイスの領域で、溶成ハイスと超硬合金との間の硬さ範囲を埋める材種が市販されており、冷間工具鋼、高速度工具鋼、超硬合金を網羅した硬さ基準の一連の型材の系列を考えることも可能です。

超硬合金

超硬合金はHIP処理の普及によって、材質の選択の幅が画期的に拡大しました。
しかし、どの材質を選択するかについては、良い指針がなく現場での経験と勘に頼るところが多く、個々の不具合に対して試行錯誤で対応しているのが現状です。

冷間鍛造金型に用いる型材料の選び方

鋼系材料また超硬合金の選び方に関して、ポイントをまとめました。ぜひ参考にしてください。

鋼系材料の選び方

  • 500℃以上の高温焼き戻しで所要の硬さが得られ、2次硬化性合金に限定します。
    温間鍛造の成形部には、所要の硬さを得るために、できるだけ高い温度、例えば600℃以上で焼き戻しができる材種を選びます。
  • SKH51を基準鋼種とし、靭性を強調するときは、同じ硬さ水準で、粉末ハイスの系列からマトリックスハイスの系列に移行します。
    硬さを強調するときは、高合金粉末ハイスの系列から超硬合金の系列に移行します。
  • 熱処理の要点は、残留オーステナイトを確実に0%とする焼き戻し回数を採用して、加工誘起マルテンサイトの生成を防ぐことにあります。
    ICFGデータシートでは、残留オーステナイトは5%以下と規定していますが、焼き戻し回数を増やして確実に0%とすることが必要です。

超硬合金の選び方

  • 成形部の変形を小さくして鍛造精度を高めるにはヤング率(縦弾性係数)の大きい超硬合金を選定します。
  • V50-HIPを基準材種とします。
    靭性を強調する時はCo量の多い合金、硬さを強調するときはCo量の少ない合金に移行します。硬さを維持し靭性を強調するときは、超微粒子合金を選択します。
  • 微細クラックの生成に関係すると言われるCo固容体の偏析、靭性の強化に有効と言われるCo固溶体の組成の調整などについては今後の事例研究が待たれます。

ヤマナカゴーキンが提供する冷間鍛造金型

当社では、長年培ってきた鍛造技術をもとに多くの精密鍛造金型を製作してきました。
特に冷間鍛造金型は高い精度と高強度を有し、超硬材の金型製作のパイオニアである当社が、最も得意としている分野であり、業界トップクラスの精度と品質を誇ります。
もし適切な型材選びに悩んでいる、金型寿命を延ばしたい、こんな部品を設計・製作したいなどありましたら、お気軽にお問合せください。

精密鍛造金型カタログ

精密冷間鍛造金型を強みとし、温感・熱間・冷間複合鍛造金型、非鉄金属鍛造金型、 フローフォーミング成形金型など、様々な成形工程にあわせた金型製作が可能です。

無料ダウンロード

関連記事

人気記事

お問い合わせ

contact

弊社製品、サービスについて、ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
弊社営業拠点に直接ご連絡いただく際は、こちらで連絡先をご確認ください。

お問い合わせ

Top