ダイセットとは?構成や種類から、不良品検知機能を備えた最新のダイセットまで紹介

ダイセットは、塑性加工用の金型をプレスに取り付けるための治工具で、上型と下型の位置関係を正しく保つために使用します。当社では、「閉塞ダイセット」をはじめ、古いプレス設備でも高精度な鍛造品生産を可能にする「高精度ダイセット」、不良品を検知できる「スマートダイセット」などを取り扱っています。本記事では、ダイセットの概要から、各種ダイセットの仕様を紹介します。

ダイセットとは?

ダイセットは、塑性加工用の金型をプレスに取り付けるための治工具で、上型と下型の位置関係を正しく保つために使用します。
共通して対応できる標準のダイセットを製作することで、一部分(成形部の金型など)のみの交換だけで、複数の工程及び製品を塑性加工することができます。「偏芯精度」の確保が重要で、加工精度及び組付け精度が悪いと、パンチ側(上側)とダイス側(下側)の同芯が確保できず、金型や製品に悪影響を及ぼすため注意が必要です。

ダイセットの構造

ダイセットは以下の部品にて構成されます。それぞれ個々の部品は、なるべく単純な形状になるように設計製作されています。

  • 素材に接して製品の形作りをする「成形部」
  • 成形部をプレス機械にマウントする「取付け部」
  • 成形部に作用する圧力を緩和してプレス機械本体に伝達する「受圧部」

ダイセットの種類

ダイセットには様々なものがあり、要求される剛性・精度・用途に応じて使い分けます。
例えば、剛性に関してはスチールタイプとアルミ合金タイプがあり、精度に関しては主にガイドポスト・ブッシュの嵌めあい方法が異なるものが多数あります。
また用途に関しては、トリミング用をはじめ、多種多様なものが存在しています。あらゆるジャンルに適用可能ですが、価格・機能性・品質を考慮したうえで、決定する必要があります。

閉塞ダイセット

閉塞ダイセット
閉塞ダイセットとは、正確には「閉塞鍛造用のダイセット」のことを指し、上下の金型を閉じて空間に鍛造素材を押し込んで成形するための装置です。
成形が始まる前に金型は閉じていなければならず、鍛造圧で金型が開こうとする力に耐えなければなりません。閉じ力≧開く力の関係になりますが、その力(閉塞力)はプレスの負荷となって鍛造能力を削ぐことになります。閉塞力は大き過ぎると鍛造に使用できる力が減り、小さ過ぎると金型が開いてバリの発生、鍛造品の精度が確保できなくなります。
特筆すべきは鍛造中の成形荷重と金型を開こうとする力が一定ではなく変化することです。金型を開こうとする力に対し常に約20~40%程度大きな力で閉塞させることが理想です。

閉塞鍛造法の特徴

まず閉塞鍛造法の最大の特徴として、バリ無し成形やプレスの動きの方向に対し90°異なる方向の成形が可能な工法ということが挙げられます。
閉塞鍛造の工法には、以下の2つが挙げられ、それぞれ動きが異なります。

  • 片閉塞鍛造:素材を押し込む際に片側のみ押す方法
  • 両閉塞鍛造:素材を押し込む際に上下同時に押す方法

片閉塞鍛造

片閉塞鍛造では、押し込む側の金型は下死点手前で上下型が閉じ、その後下死点手前で閉じた金型側の素材を成形ピンで押し出して鍛造を行います。

片閉塞鍛造

両閉塞鍛造

両閉塞鍛造ダイセットは上下の金型が共に下死点手前で接触(閉塞)し、その後上下の成形ピンで素材を押し込み鍛造します。両閉塞の場合は上下の成形ピンを固定するプレートが上下に一枚ずつあり、閉塞する上下の金型を固定する可動プレートが上下一枚ずつあり、両閉塞鍛造ダイセットは上下四枚のプレートとガイド・ポストで構成されます。

両閉塞鍛造

通常のダイセットとの違い

通常のダイセットは上下二枚のプレートとガイド・ポストで構成されていますが、片閉塞ダイセットは押し込む側の金型とダイスとパンチに分けられ、固定側は一枚のプレートの合計三枚になります。両閉塞の場合は上下で四枚になります。
上下金型が指定位置で正確に嵌合することが重要で、同芯度、位相、傾きを高精度に管理しなければならなりません。従って嵌合に関わるガイド・ポスト・嵌め合い部分等のクリアランスは10ミクロン単位で設定され、嵌合面は常に潤滑が供給されていることが重要です。
デメリットとしては通常二枚のプレートのものが四枚となり重量が嵩むため、過重量を気にしなければなりません。(プレスの許容重量、クレーンの許容重量等)
通常ダイセットの多くは鍛造品精度はプレスの精度に依存しており、初期精度があれば経年変化は余り気にしない傾向があります。一方で、閉塞ダイセットでは、金型同士が接触する精度はプレス精度を遥かに超えるため、各部の精度確保が非常に重要です。

バネ式と油圧式の違い

必要閉塞力は鍛造品形状で異なりますが、閉塞力を得る方法として以下の2通りがあります。

  • バネ式閉塞ダイセットバネ式は初め弱く徐々に強くなり下死点で最高圧を発生するので最後の方だけ必要閉塞圧が高いものに適しますが、数多くのバネを使用するため余裕のあるプレートの大きさが必要です。機械式なので電気不使用の大きな利点があります。
  • 油圧式閉塞ダイセット油圧式は初めから高い圧力が発生できるので、初期から高い閉塞力を必要とする製品に適合します。油圧を使用するのでデリケートな管理が必要なことと電源を必要とします。

高精度ダイセット

最近、高精度なプレス設備を用いた高精度鍛造製品の開発例が報告されていますが、高価な設備投資が必要なことから、古いプレス設備を保有している中小企業に対してはなかなか実現が難しいことが実状です。
「高精度ダイセット」は、既存のプレス設備をそのまま利用しながらも、最新の高精度な設備の冷間鍛造工程と同等もしくはそれ以上の寸法精度の実現ができます。
高精度ダイセットは、冷間鍛造工程におけるダイセットおよび金型を対象としており、プレスの動作による影響を最小化しながら鍛造品の寸法振れを大幅低減させるために、プレスモーションの影響を排除する技術、高精度位置決め技術、ゼロクリアランス成形技術を適用しています。これらの技術は独立しているため、既存工程の改善として部分的に適用することでも効果が期待できます。

通常のダイセットとの違い

通常のダイセットは、取付けられたパンチがプレスの上部プレートの動作に追従する構造をしています。
一方、高精度ダイセットでは、同芯度および垂直度へ悪影響を及ぼす横方向の動作成分および回転動作成分の影響を低減する構造を適用しています。

両閉塞鍛造

また、通常のダイセットではパンチガイドを下部金型とインローにすることで、鍛造品の同芯度および垂直度を決めるため、インロー部の隙間やパンチガイドとパンチのクリアランスが同芯度および垂直度に影響を与えます。
高精度ダイセットは、上下金型の同心精度を確保するための位置決めを凹凸形状とし金型の外側上面に位置させた上に、位置決め部に対してパンチがゼロクリアランス状態になるような構造になります。従って位置決め部のゴミなどの噛み込みの防止、パンチのゼロクリアランス部は常に潤滑が供給されていることが重要です。

両閉塞鍛造
両閉塞鍛造
デメリットとしては、パンチガイドが大きくなり、成形開始前に上下金型をキッシングする必要があるため、搬送装置との関係に注意しなければならないことが挙げられます。

スマートダイセット

スマートダイセット
鍛造の異常検知を行う上で、必須となるセンサー(PiezoBolt)および関連機器の配線をダイセット内に格納したダイセットです。

※ボルト型圧電式荷重センサー「PiezoBolt」とは?
ボルトの内部に圧電素子を用いたセンサーユニットが埋め込まれた荷重センサー。
力(圧力)を加えることで電圧を発生させる圧電効果を利用して、微小な荷重変化の計測が可能。
より詳しい内容は、以下リンクよりご覧ください。

モニタリングソリューションのセンサー

特徴としては、以下のことが挙げられます。

  • センサー類の配線がダイセット内に格納されているので、安全性が高く断線等の恐れがない
  • 面倒な配線の取り回し作業がない上に、電源供給がワンタッチで可能なため、段取り時間を大きく削減
  • 現場だけでなく、遠隔地からもリモートでリアルタイム監視が可能

最後に

いかがだったでしょうか?
当社では、お客様のニーズに沿ったダイセットの設計製作が可能です。
お悩み事等ありましたら、お気軽にお問合せください。

ダイセットカタログ

モニタリング機器を埋め込んだダイセット「スマートダイセット」をはじめ、閉塞ダイセットや油圧ダイセットなどをまとめたカタログです。

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